― 五行とグラウンディングに通じる、昔の知恵 ―
雷が鳴ると、
「お腹を押さえなさい」「おへそを隠しなさい」
そんなことを子どものころに言われた記憶がある方も多いのではないでしょうか。
一見すると迷信のようですが、
この言い伝えには、東洋思想の五行と、身体感覚としてのグラウンディングが深く関係しています。
雷は五行でいう「木」
五行では、自然界のあらゆる現象を
木・火・土・金・水の五つの気で捉えます。
雷は、この中で
木の気に分類されます。
木は本来、
成長 上昇 動き 広がる力 を表すエネルギーです。
雷とは、その木の気が一気に高まり、
制御を失ったような状態。
つまり、非常に強く荒ぶった木のエネルギーなのです。
お腹の中心は「土」
一方で、私たちの体。
東洋医学や五行では、
お腹の真ん中(へそ周り・丹田)は、
消化吸収 生命力 心と体の安定 を司る場所とされ、
五行では土にあたります。
土は、すべてを受け止め、整え、安定させる役割を持っています。
だから昔から、「お腹を冷やさない」「お腹を大事にする」
と言われてきました。
木と土の関係 ― 相剋(木剋土)
五行には、相生と相剋という関係があります。
その中で、木は土を剋す 木の力が強くなりすぎると、土は乱される
これを木剋土といいます。
雷は、極端に強くなった木の気。
その影響を一番受けやすいのが、
体の中の「土」であるお腹の中心なのです。
雷が鳴るとお腹を押さえる意味
だから昔の人は、理屈ではなく感覚として知っていました。
雷が鳴ったとき、
無意識にお腹を押さえるのは、
- 強い木のエネルギーから
- 自分の土(生命の中心)を守るため
- 土の気を安定させるため
この動作は、今でいうグラウンディングそのものでもあります。
意識を下に下ろし、自分の中心に戻る行為。
身体はちゃんと、自然の変化に反応していたのです。
迷信ではなく、身体に残る知恵
「雷は土に落ちる」という言い方も、
物理の話ではなく、象徴の世界の表現。
自然の大きなエネルギーと、
人の身体の弱りやすい場所を、
昔の人は感覚でつなげていました。
雷が鳴ったらお腹を守る。
それは恐怖からではなく、
自分の中心を大切にする知恵だったのかもしれません。

